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ラブレターフロームカナダ

ラブレターフロームカナダ

道子の日記3,1~

第1話、ハイホ~ハイホ~♪


処女を喪失してからの私の気持ちと言うものは、まさに、


ハイホ~ハイホ~今日はいい天気~♪


というもので、
両手をふって大声で歌いながら歩きたい気分が続いていた。

 

次の日の月曜日、
私はジーンズよりも
スカートを履いていきたい気持ちで、

胸元の開ききったトップを着るよりも、
首までしっかり閉じたものを着ていきたかった。


お粗末な服が並んでいるクローゼットから、
先週買っていた安物のベージュのスカートを履くと、
その上に黒のコットンのセーターを羽織り、
首にはシルバーのネックレスを合わせた。



今まで彼氏を探している間は、
私なりの判断で、下品にならないぎりぎりの線で
(これが下品になりすぎていたのだが、、)
胸元を見せたり、
スリットの長いスカートを履き、
三十路のおみ足を見せていた。

それもこれも男の気を引くためであって、
ちょっとでも肌を見せることで
男性と知り合うチャンスをアップさせるというものであったのだ、、。


だが、ジムと出会い、生まれ変わった私は、
男を探す必要がなくなったのだ。

立派な彼氏がビクトリアに居るのだ、、

守ってくれる彼氏がいる、、、

そう、その月曜日のファッションというのは、名づけて、

「男の守られている、ちょっとした若妻風」

だったのではないだろうか?


何処までも、果てしなく、
か弱い女を演じてみたかった。





教室に着くと、いつものように、
菊ちゃんの横に座った。

私が席に着いたあとすぐに
遅れて教室に入ってくる百合を見て、
彼女に手招きをし、
自分の横に座らせると、


「百合、ごめんね、ロベルトのこと、、、

きっと、あのクラブにダンが来たものだから、ロベルトやきもち焼いて、

たまたま偶然隣にいた私にそうしただけだと思う、、、

本当ごめん、、、」



と謝ると、
百合も百合で、
そう悪い子ではなく、


「こっちこそごめん、なんか大人気なくって、、、

あのあと、ロベルトも謝ってきて、
とりあえずは仲直りしたんだけど、、、

私も道子に対して怒るなんて、どうかしてた、、」



と、待ってましたと、素直に謝ってきた。




友達との喧嘩というものはこういうものなのかもしれない、、

大袈裟に喧嘩した後でも、
やはり心のそこには「好き」という気持ちがあるものだから、
双方仲直りしたいと思っている。
だが、変なプライドや見栄や意地が邪魔をして、
謝ることに照れてチャンスを逃すパターンが多い。

だから、
どちらか一方が謝れば、
向こうも簡単に折れてくる、、、





私はやはり百合が好きだった、

意地っ張りで見栄っ張りで、
でもほっておけなくて、、、

本当は寂しがりやなのに、
それを隠して強がっている、、、



「これからも私達、友達だよね?」



そう聞くと、
百合は少し照れた顔で頷いた。

そのしおらしい百合の顔を見ながら、

再び私の頭のなかで
あの曲が鳴り始めていた、、、


ハイホ~ハイホ~♪
今日は仲直り~~♪


                    続く



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第2話、将来ある恋愛?


 

「実はさ、日本の彼と昨日電話で別れたの、、、」


彼氏と別れたにしては
かなりすがすがしい顔つきで菊ちゃんは話し始めた。


「で?」

私と百合が身を机に身を乗り出し
菊ちゃんに次の言葉を待っていた。


「でもね、彼、別れないって、、絶対に別れないって言うのよ、

韓国人なんかと一緒になってどうするんだ、、
外国に住む気か?菊子の親が聞いたらどう思うか
考えた事があるか?

それに、俺の気持ちはどうなるんだ、、、

ってね、彼、私が日本に帰ってちゃんと話し合いをするまで
別れないって、、、」





「それって、まだ別れてないじゃん、、」

一言多い、百合が言った。


少し気まずそうな菊ちゃんは、


「ま、そうなんだけど、、

でも、私の気持ちはもうジュンにあるし、
日本の彼がどう言おうと、
私はジュンと一緒になるの、、、



来月、ちょっと日本に帰ってこようと思うの、
1週間ぐらい、、そのときに、日本の彼としっかりと別れて、

それで戻ってくる、、、

そうなれば誰に気兼ねも無しで
ジュンと一緒にいられるし、


ジュンもそうして欲しいって、、、、」





教室の机は「コ」の字型に置かれており、
私は向かい側に座るジュンを見ていた、、。



韓国俳優の、誰だっけ?誰かに少しだけ似ている顔、、
確かに顔は男前だった、、

でも服装も髪型もダサく、肉の食べすぎなのか
顔が脂ぎり、顔のニキビが赤く目立っていた、
教室でも、たまにちょっとトンチンカンな答え方がクラスの笑いを誘ったが、
あんな会話を24時間隣で続けられるとなると
私なら嫌気がさすだろう、、


なんでこんなにかわいい菊ちゃんとあの男が?


まだレイ(ジュンの友達の韓国人)の方がマシなんじゃない?
頭もいいし、
年齢的にも落ち着いているし、将来を考えやすい相手だ、、

なんで、ジュンなの???


そんな疑問を隠せずにいた。





「道子は菊ちゃんの恋愛賛成?」


百合が菊ちゃんに聞こえないように
ぼそっと私の耳に囁いた。


私は浮かない顔をしながら、、


「100%じゃないけど、菊ちゃんが好きなら応援するしか
ないでしょ、、、友達なんだし、、、」


昨日のフェリーの中では全ての愛に寛容になろうと決意したにも
関わらず、
こう現実を見せ付けられると
すこし躊躇し始めていた。



「友達だから、はっきり言ったほうがいいんじゃない?
あまり賛成しないって、、、」




私と百合には何かがはっきり見えていた、
菊ちゃんに見えない何かが、、

「なんであんなにパーフェクトな日本の彼氏を捨てるのよ、、
これってただ、寂しいから、ジュンに走っただけなんじゃないの?
条件的には絶対日本の彼氏の方がいいよ、
もう一回考え直したら?

今なら日本の彼も許してくれるよ、、、」


というものだった。
ただ、それを、
菊ちゃんに伝えられずにいた。




ひょっとすれば、
私と百合の場合もそうだったのかもしれない、、、

私とジム、
百合とロベルト、ダン


で、私達には見えない何かが、
第三者にははっきり見えていたのかもしれない、、、。




「カナダに居る間のちょっとした火遊び?」




それならそれでいいのかもしれない、

大事な何かが私達の恋愛で見つからなくても、
ひと時の情事を楽しめるのなら


赤の他人は黙っておきましょ、で、いいのかな。



                   続く


第3話、お初なお披露目


「ジミーって覚えてる?ほら、
昔、私が夢に出てくる男性に初恋した話、、


あの人に似ている人と、付き合い始めたのよ~~」



ジムの話しがしたくてしたくて
うずうずしていた私は、

菊ちゃんの、ジュンの話をさえぎり、
仲直りした百合に
話しだした。



「あ、あの夢男って人のこと?」


菊ちゃんが先生の目を盗んで聞いてくる、


「そそ、そうなのよ、、

実はね、
先週の土日、ビクトリアにある

彼の家にお泊りしていたのよ~~」




「うわっつ、お泊りって、

なんかあったんじゃないの?

33歳にして、
やっと処女喪失?」


百合が面白そうに聞いてきた。




そう、百合と菊ちゃんには全てを話していた、

先々週のロベルトの一件で、
私の嘘の鍍金が一気にはがれ、
そうならば、全て話そうじゃないかと
私も開き直ってしまった。

本当は、
高校の文化祭で踊った「マイムマイム」以外は
男性の手さえも握った事が無かったことなども
全て包み隠さずに話すと、

自然と肩に荷が下りたように
楽になっている自分にも気がついていた。



私の三十路処女の話に
二人はかなりの驚きを隠さずに
びっくりしている様子だったが、

しばらくすると、


「これからよ、これから素敵なひとみつければいいじゃん、、」


と、
彼女らのびっくりした私への視線は、
優しい根拠の無い励ましに変わっていった。





そんな話を先週していた今日だから、
百合も私の


「いきなり処女喪失」

にびっくりしていたのだろう。


暫くすると、


「よかったじゃ~ん」

菊ちゃんは私の腕を掴み、
嬉しそうに喜んでくれた。




「本当、やっと彼氏できたじゃん、おめでとう、、」




百合も心から私の恋愛を喜んでくれていた、、、。



そんなところへ水をさすのも、
と思ったが、
頼れる相手は彼女達しかいなかった。


私はごそごそをカバンのそこを探ると、
一枚の写真を彼女達の前に置いた、、



「実はね、、、これがジムなの、、」


それは、
私の知らない日本人の女の子が
彼の隣に嬉しそうに座っている写真だった。




「あ、男前じゃ~~ん、、、


ん?あれ?

これ誰よ?

道子じゃないじゃん、、、、」




私は、
そんな百合の言葉と共に、
彼女の笑顔が
微妙にいがみはじめているのに気が付きだしていた。



                   続く



第4話、第一関門



百合のそんな表情をみながら、
私は写真を見せることにためらいを感じはじめていた。


「そうなのよ、、

これ、彼の家で見つけちゃって、、、」





「ん?これ、日付入ってる、
今年じゃん、え、

すっごい最近じゃん、、」




百合が写真を食い入るように見つめている、、



「あれ?裏にこんな事が書いてある、、


Dear Jim
Thank you for having me,, Lovely Etsuko

え?なにがハビングよ?
このハビングってどういう意味よ、、、


それになによ、これ、ラブリーって自分のこと
ラブリーって書いてるじゃない、、、

なに~この女、なんか匂う~!」



写真の裏のメッセージを
百合が目ざとくみつけたのだ。


それを聞いて、
菊ちゃんが姿勢を低めて
メッセージを食い入るように読みはじめた。



「ラブ、愛を込めて、と、ラブリーを
ただ間違えたんじゃないかしら?」




「わざとじゃないの?自分を可愛いと思っているとか!」


百合が少し声を荒げる、
その台詞を聞いて、

私の心は何故か
少し落ち着いた、、、。



「ハビングって、
どういう意味で書いているんだろう、

どこかへ招待したんじゃないの?
例えばパーティとか、、

う~ん、これだと後ろにビーチが写っているから、
一緒にビーチにいったのかな?

ビーチで一緒に過ごした、その時取った写真を
渡すときに
お礼を添えたって感じ?」



菊ちゃんも一緒になって考えてくれている。



「ビーチへ招待しただけならいいけどね、、、」


百合が冷たく言い放ち、、


「それで、これ、ジミーに聞いたの?」


私の目を見た、真っ直ぐな視線が苦しくて、


私は伏目がちに、

ただ首を横に振っただけだった。


                   続く



第5話、私は無力?





「なんだか聞けなかった、、、
聞かないほうがいいような気がして、、、


きっと、彼女、ただの友達だろうって、

だって

そうじゃなきゃ、


普通の考えだと、

私を誘ったりしないでしょ?」



自分に言い聞かすように、
百合に弁解した。


「ふ~~~っ、、

やっぱ、道子、甘いよ、、、

それって、日本人が思う、

“普通の考え”でしょ?

ここはカナダで、
相手はカナダ人、

日本と全く違う文化で育った人間を
日本人の考えに当てはめるって無理があるよ、、、



聞かなきゃ、疑問に思ったことは
すぐその場で聞かなきゃ、、、


でなきゃ、

でなきゃ、

男に良い様に扱われるだけ、、、
都合がいいってね、、、」





それで、その日のジムについての会話は終った。




ルンルン気分でビクトリアから帰ってきたにも
関わらず、
その次の日の月曜日には、その気分も
どん底に落とされ、
それからは浮かない日々を過ごしていた。

その週は、
ジムはビクトリアに来る用事が無いらしく、
再び週末に
私がビクトリアを訪ねる約束をしていた。


彼と今度会うまでに、
それまでに
自分の出方を決めなければならなかった。



彼に問い詰めるか、
それとも知らないふりをつづけるか、、、
どっちにするか、、、



どちらかと言えば、
私は知らないふりを続けたかった。

なぜならジムと付き合いだしたばかりの二人の関係は
もろく浅く思えて、
ちょっとしたことでも

「壊れてしまうのでは?」

という、
恐れがあったからだ。


百合は、


「そんな、恐れるような恋愛ならば
こっちからさよならした方がいいよ、、、

そのほうが道子のため!」



と言っていた。

それはそれで
私にも十分理解できたのだが、

初めて自分を捧げた夢にまでみた男性を、
私のちょっとした嫉妬で
失いたくなかった。

そう、
ちょっとした、嫉妬、、、

それで片付けようとしたかった。



結局、


このツルンツルンな脳ミソで
やっとのこと
思い立った計画が、


「ちょっと早めにいって、彼に隠れて家の中を
あら捜しでもしてみるかな、、」



と、
ちょっと情けない発想だったが、

その時の私には
それぐらいしかできることは無く、


彼に絶対服従するかのように、

彼に心底惚れてしまった

無力な女だったのだ、、。





                   続く



第6話、けじめ


授業が終わり、
久しぶりに3人でカフェに来ていた。

もちろん菊ちゃんは3時から、ジュンと、
私も夕方からカフェのバイトと予定があったので、
それまでの時間、
3人でゆっくり語ろう、ということになったのだ。



「ジュンってね、、、優しいのよ、、、」

私のジムの話を差し置いて、
一番にのろけたのは菊ちゃんだった。


菊ちゃんの恋愛は、
日本の彼氏と別れていないということを除けば
順調そうに見えていた。

ただ一つ心配だったのが、
菊ちゃんの若さと、
その菊ちゃんよりも二歳も若い
ジュンの年齢だった。

菊ちゃんが23歳で、
ジュンが21歳、

その若さをもって、
本気で

“結婚”

のことを考えているのかが
33歳の私には疑問だったのだ。



「決めちゃったの、、ホストの家、今月出る、、、」


菊ちゃんが少し恥らいながら、話を続けていた。


「ジュンと住むの?」


当然のごとく、
彼女達は同棲するものだと考え、
私はそう聞いてみた。


「ううん、、ジュンがね、ケジメだけはちゃんとつけようって、

一緒には住まないの、、

でも

彼の居すんでいるところのワンブロック違いに
住むところみつけてね、

そこならいつでも行き来できるし、

部屋はかなり狭くて、それでいてベースメントだから、
暗いのよ、、

あんまりよくないんだけど、


でも、
ジュンの所にいつでも行けるなら、

それでいいかな、って、、、」




相手が日本人や、カナディアンの男の子ならば、
きっと、


「一緒に住もう、そのほうが家賃も安くあがるし、それに
将来結婚するんだから、

これから同棲してお互いのことを知ったほうがいいし、、」




などというのではないだろうか?


親の居ない、カナダという無法地帯で、
女の子が誰かと同棲するなんて
かなり簡単なことだった。


この、彼の言う、

「けじめ」

とは何なのだろうか?



彼の
自分を正当化するような

「けじめ」

の使い方に、
私は何故だか納得することが出来ずにいた。




「やっぱり、ジュンってちゃんとしているわ、
結婚前に同棲なんて出来ないんだって、、、」



「そうだよ、韓国ってまだまだ封建的なところあるからね、
同棲もしないだろうけど、
処女じゃない女の子とも結婚できないんだよ、、、」



隣で聞いていて百合が
口を挟さみ、その一言で、
なんだかどんよりした空気が
3人の間に流れ始めていた。


                   続く


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